「サイエンス・ビジネスの挑戦 バイオ産業の失敗の本質を検証する」の読書メモ
サイエンス・ビジネスの挑戦 バイオ産業の失敗の本質を検証する
Amazon.co.jp: サイエンス・ビジネスの挑戦 バイオ産業の失敗の本質を検証する: ゲイリー・P・ピサノ, 池村 千秋: 本

きちんと読み込む必要が発生したので、内容をメモ。

著者について
- ゲイリー・P・ピサノ (Gary P Pisano)
- バーバード・ビジネススクール教授

はじめに
・研究の動機 (研究開始は、20年以上前)
バイオテクノロジー (BT) 産業の以下の特徴に惹かれた
1. 研究開発と組織の仕方に関する新しい実験とイノベーションの舞台になっていた
2. 民間企業が基礎研究にかなり携わっていた
3. バイオテクノロジー産業に関わっている人たちが、とても楽観的だった

・この本の底流をなす大テーマ
「ビジネスとサイエンスの関係」
従来:ビジネスとサイエンスは別の領域
(大学 => サイエンス、営利企業 => ビジネス)
BT産業:2つの世界の混ざり合い

*具体的な調査対象 => 製薬・バイオテクノロジー産業


「序章 サイエンス・ビジネスという新しい実験」
・サイエンスに基礎をおくビジネスとは?
=> サイエンスを生み出し、その成果から利益を得ることを目指す企業 (ないし産業)

・BT産業の業績の真実 (図 序-1)
=> 売り上げは飛躍的に伸びているのに、売り上げは一貫してゼロもしくはマイナス

・BTのビジネス面での課題は、サイエンス面での3つの特質に根ざしている
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ => 本書で一貫して主張される3つの特質
1. BTというサイエンスに重度の不確実性がついて回るため
リスクを管理し、引き受けたリスクに応じて利益を分配するメカニズムが必要
2. ビジネスの基礎となる化学的知識の複雑性・学際性が極めて高く
学問分野や専門分野の垣根を越えた「擦り合わせ」が欠かせないこと
3. サイエンスの進歩のペースが速く、学習の積み重ねが不可欠なこと


本書の構成 (図 序-2 から作成)
+----------------------+ +----------------+ +-------------------+
| サイエンス世界の特徴 | -> | 解決すべき課題 | <-> | 産業の「生体構造」 |
+----------------------+ +----------------+ +-------------------+
|<------------------ 第1部 ------------------->| |<------ 第2部 ------>|
|
V
「第3部 あるべき企業戦略、ビジネスモデル、資金調達」


*議論の対象は、製薬研究開発に限定


「第1部 不確実性、複雑性・学際性、変化の速さ」
「第1章 サイエンス世界の地図」
・それぞれの時代でキーになった技術
- 遺伝子組み換え
- モノクローナル抗体
- コンビナトリアル化学
組み合わせ論に基づいて列挙し設計された一連のケミカルライブラリを
系統的な合成経路で効率的に多品種合成するための実験手法
広義の意味では、in silico でのシミュレーション評価も含む
(コンビナトリアルケミストリー - Wikipedia)
- ゲノミクス
- プロテオミクス
- RNAi
- システム生物学
- 合理的薬品設計
- ハイスループットスクリーニング (HTS)

「第3章 製薬研究開発の特異性と課題」
・CPU開発との比較により明らかになる製薬研究開発の特異性
1. 不確実性 (<= 人間の生物学的システムとプロセスについての知識不足が原因)
CPUの開発 => CPUとしての機能を満たすものは確実に完成する
新薬の開発 => 大多数が失敗に終わる

2. 「すりあわせ型」という性格
デスクトップPC => 高度にモジュール化されている「組み合わせ型 (= モジュラー型)」
新薬研究開発 => プロセスを構成する活動の相互依存的性格がきわめて強い
*サイエンスの進歩により、
「知っている」ということよりも「知らない」ということが浮き彫りになった

*新薬開発のサイエンスの特性
=> 結果が出るまでに時間がかかる
<=> サイエンスの進歩のスピードとの齟齬


・問題解決に必要なメカニズム
1. リスク管理
- 情報を作成・発信するメカニズム
- 資金調達、投資への見返りのメカニズム
2. すり合わせ
- 専門分野の垣根を越えて人材、スキル、能力を統合するメカニズム
3. 学習
- 経験を通じた学習を実践・促進するメカニズム


「第2部 バイオテクノロジー産業の「生体構造」を解剖する」
「第4章 バイオテクノロジー・ビジネスの変遷」
・図4-2 中核技術別に見た新規参入企業の数
1. 新規参入企業の数には、いくつかの波がある
2. テクノロジーの種類が非常に多い
(「バイオテクノロジー」という1つのテクノロジーがあるわけではない)
3. 新規参入の波ごとに、原動力になった技術戦略が異なる

・図4-3 臨床試験の申請数 (1986-2004年)
申請数はほぼ横ばい
=> テクノロジーの進歩は、化合物の「質」を高めはしなかったようだ
* 2002年の時点で、コンビナトリアル化学の手法で
FDAの承認を受けた新薬は1つもない

・ノウハウの市場
新興BT企業と大手製薬企業の提携や協力が重要な役割を果たすようになってきた


「第5章 バイオテクノロジー産業、三〇年目の成績表」
・図5-2 バイオテクノロジー産業の収益と利益の推移
- 収益は増えているが利益は横ばい
- ほとんどの期間を通じて、利益はゼロもしくはマイナス
* 上場企業のみのデータ (未上場企業の大多数は赤字)
=> 産業の実態は、もっとひどいはず
- 総利益の53%は、アムジェンとジェネンテックの2社で稼いでいる
- 大多数のBT企業は、黒字だったことが一度も無い


「第6章 知的財産権の「収益化」のメカニズム」
・BT産業を動かす3つの要素について
1. 新しい企業の設立という形での大学から産業界への技術の移転
2. 資本調達市場 (ベンチャーキャピタルと株式市場)
3. ノウハウの市場: 新興企業が既存企業と提携し、知的財産と引き換えに資金を獲得する市場

・知的財産収益化のメカニズム
大学がサイエンスを生み出し、その中から研究者が新しい企業を設立する
^
| + ベンチャーキャピタリスト
+- 資金 -+ 株式市場
+ 既存企業との提携による資金提供

・リスク管理の達成度
- リスク管理に必要なもの
1. 幅広い選択肢と実験 => OK (多くの新企業、ノウハウの市場)
2. 必要な情報の流通 => NG
3. リスクへの見返り => OK (起業家、ベンチャーキャピタリスト)

・ソフトウェア産業、半導体産業はなぜうまくいっているか? (すり合せの評価)
1. モジュール化 +
2. テクノロジーが形式知 + <=> BT産業と対照的
3. 強力な知的財産保護の仕組み + => すり合せを実現させるのが困難

・組織学習
3つのチャネル
1. 創造的破壊 (新しい技術が既存のものを淘汰する)
=> 実現していない
2. 模倣
3. 経験からの学習
=> BT企業の多くが新企業 => 経験不足


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by fkmn | 2008-10-06 23:55 | 読書記録
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