カテゴリ:読書記録( 67 )
【感想】フラット革命
フラット革命
Amazon.co.jp: フラット革命: 本: 佐々木 俊尚

 著者の佐々木さんの本は、いまいち構造化されていないので、僕にとっては読みにくい。にも関わらず、ついつい読んでしまうのは、著者のジャーナリストとしての立ち位置が明確で、ブレがないから。本書も、そんな僕の期待通りの内容だった。

 本書の概要は、プロローグに書かれている内容ほぼそのまま。
この本で書こうとしているのは、次の四点である。
フラット化とは、いったい何なのか。
なぜフラット化が起きているのか。
それはどのような組み替えを引き起こすのか。
そして、フラット化が生み出す新たな難問とは何か。
p. 3

 基本的に日本国内の話題が中心なので、「ネットの発達(フラット化)」という世界共通の話と「戦後社会の崩壊」という国内限定の話、およびその二つが混ざり合う事が原因で発生する話題がごちゃ混ぜになって、ちょっとややこしい。ただ、その分、似たような話題を取り扱う他の本と比べて、現実感がより強い。

 第四章は、丸々「ことのは事件」について割かれている。当事者でもある著者による事件経緯のまとめは、それだけでも読んでいて面白い。ただ、ネットの公共性というものを考えた場合に、それは人ごとではなくて、自分も考えなければいけない問題だという事にあらためて気づかされる。普段、ネットに接していると、そういうことを立ち止まって考える機会はほとんどないんだけれど。
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by fkmn | 2007-12-05 23:55 | 読書記録
【感想】ゲーデルの哲学
ゲーデルの哲学―不完全性定理と神の存在論 (講談社現代新書)
Amazon.co.jp: ゲーデルの哲学—不完全性定理と神の存在論 (講談社現代新書): 本: 高橋 昌一郎

 小飼弾さんが絶賛しスゴ本のdainさんが「岩波文庫で撃沈したが、本書から攻めたらすんなり入れた。」と言っていたので、ちくま学芸文庫の野崎本で沈没した僕でも読めるかと思って読んでみた(野崎さんの本も、丁寧に解説されてはいるんだけど、中盤あたりからついていけなくなった・・・)。

 結論から言うと、これを読んで、不完全性定理が証明した事のイメージはつかめた。と同時に、弾さんが「15歳の頃不完全性定理を見てしまって、一週間飯がのどを通らなかったことがある」と言った理由も分かった。こうまで見事に人類の限界を示されたりしたら、そら確かにショックですよ、お兄さん。

 なかなかに罪深い(?)定理ではあるけれども、やっぱり、イメージだけでも掴んでおいて損はない話だと思う。今度は、また、野崎本にチャレンジしてみようかなぁ。
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by fkmn | 2007-12-02 23:55 | 読書記録
【感想】暗号解読
暗号解読 上巻 (1) (新潮文庫 シ 37-2)  暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)
Amazon.co.jp: 暗号解読 上巻 (新潮文庫 シ 37-2): 本: サイモン・シン,青木 薫
Amazon.co.jp: 暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3): 本: サイモン・シン,青木 薫

 サイモン・シンの前作「フェルマーの最終定理」があまりにも素晴らしかったので、ついつい買って読んでしまった。

 本書で扱われている内容は、「帯」にあるとおりカエサル暗号(シーザー暗号)から量子暗号までと幅広い。暗号技術の歴史を概観するのに過不足無い一冊だと思う。

 特に、Diffie-Hellman や RSA 暗号が、イギリスで独自に発見されていたという事は、本書を読んで初めて知って驚いた。その他にも、エニグマやらナヴァホ兵やら、いろんな話満載で面白い。

 サイモン・シンの取材力と文章力(そして訳者の翻訳力)は、本書でも健在で安心した。けれど、さすがに「フェルマーの最終定理」には負けるかな、というのが正直な感想。「暗号解読」は、小さなトピックの集まりで、全体としてのまとまりに若干欠けている。

 あと、明確な不満点が一つ。上下巻に分冊されてしまっているため、上巻の部分の補遺が、下巻に収録されてしまっている事。なので、上巻を読んでいて、補遺が示されている部分でそれを読もうとしても、読む事が出来ない。これは結構イライラした。上巻の部分の補遺は、上巻に収録してしまうか、そうでなければ、いっその事、分冊しないで欲しかった。
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by fkmn | 2007-11-24 23:55 | 読書記録
【感想】ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか
ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687)
Amazon.co.jp: ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687): 本: 梅田 望夫

 これからの世代が進むべき道とその走り方を示した一冊。ウェブ云々よりも、もっと大きな視点の話として捉えた方がよい本かもしれない。

 今の時代は、言ってみれば、組織や個人のあり方が、イノベーションのジレンマ的パラダイムシフトを迎えている時代なのかもしれない。大企業のような大きな組織が持続的イノベーションだとすると、個人やオープンソースのコミュニティは破壊的イノベーションに喩えられる。

 特に、ニコニコ動画なんかを観ていると感じるのは、大企業が潤沢なリソースを費やして「作り上げる」ものより、個人が「作ってみた」ものの方が格段に面白い事。作品の進化がリアルタイムに見えるスピード感には何とも言いがたい感慨がある。もちろん、大企業の作ったものの方が従来的な意味での「質」は高いんだけれども、ツールによって個人と企業の差が埋まってきた今では、そういう「質」以外の部分が大事な気がする。

 そんな流れの中で、大組織は、小組織にその存在意義を問われる場面が多くなってくるんだろう。そういう意味では、大企業にいるにしてもそれなりのリスクに対する覚悟が求められるのがこれからの時代なんだと思う。

 一番怖いのは、「三十歳から四十五歳」という大切な時期を無自覚に過ごしてしまう事(p.189)。それだけは、絶対に避けたいと思う。
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by fkmn | 2007-11-13 23:55 | 読書記録
【感想】ローマ人の物語 最後の努力
最後の努力 (ローマ人の物語 13)
Amazon.co.jp: 最後の努力 (ローマ人の物語 13): 本: 塩野 七生

 この巻で述べられるのは、ディオクレティアヌス帝とコンスタンティヌス帝の治世。「3世紀の危機」をなんとか乗り越えた後に待っているのが、国内の主導権争いという、ある意味ベタな展開。そして、国を存続させる為の施策(元首政から絶対君主制への移行、分割統治、キリスト教の公認)が、ローマからローマらしさを奪い、ローマの滅亡へと向かう。ローマの向かう先を知っている人間からすると、なんとももどかしい展開が続く。

 この巻で個人的に一番印象的だったのが、コンスタンティヌス帝の凱旋門の浮彫。筆者は、これまでの時代のものと比べて「稚拙」と評しているが、実際に本書の画像を観ると、これが本当に「稚拙」としか言いようがないのに笑ってしまう。文明の退化というものをあらためて実感させられる画像だと思う。もっとも、ローマ崩壊後に暗黒時代を迎えるヨーロッパにとっては、これぐらいの退化は生易しいものなのかもしれないが。

 そして、本書の中にでてくる一文。
これほどまでして、ローマ帝国は生き延びねばならなかったのであろうか
これには激しく同意しつつ、我が身を省みらずにはいられない。日本はどうなのよ、と。2000年後に(既に滅びた)日本を研究する人がいるとして、その人物は同じ感想を日本に対して抱くのではないだろうか。そう考えると、なんとなく当時のローマ人の心情も分かってくるような気がする。
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by fkmn | 2007-11-03 12:10 | 読書記録
【感想】ローマ人の物語 迷走する帝国
ローマ人の物語 (12) -迷走する帝国
Amazon.co.jp: ローマ人の物語 (12) -迷走する帝国: 本: 塩野 七生

 今後のローマ人の物語文庫版は1年に単行本版1巻分のペースでの出版、ということで、そんなペースに付き合ってられなくなって、図書館で単行本版を借りてきた。残すは、今回の「迷走する帝国」を含めて4巻分なので、最後まで一気に読んでしまうつもり。

 ということで、第12巻の「迷走する帝国」の感想。


 この巻で述べられるのは、五賢帝時代を終え、いわゆる「3世紀の危機」と呼ばれる時代の話。苦しんでいるローマ人の皆さんには申し訳ないが、安定した五賢帝時代よりも、こちらの3世紀の危機の時代の方が、読者としては面白い。

 特筆すべきなのが、皇帝の入れ替わりの早さ。五賢帝時代は84年間で五人しかいなかった皇帝が、この時代は73年の間に22人の皇帝が入れ替わる。しかも、ほとんどが謀殺。皇帝がちょっと気に食わないとすぐに殺してしまう様子を見ていると、「皇帝の無駄遣い」タグでも張りたくなってくる。他にも、皇帝就任直後に老衰で死んだタキトゥスや、落雷で死んだカルスなど、この時期のローマは呪われていたんじゃないかという気にすらなってくる。

 ただ、いろいろな皇帝が登場するだけあって、中には面白い皇帝もいたりする。個人的には、見習いの訓練中に勢い余って大隊長までなぎ倒したマクシミヌス・トラクスなんかがお気に入り。

 他にも、帝国の三分割から再統合までの話も、なかなかに面白い。事態を収拾したアウレリアヌスの皇帝就任期間がもう少し長かったら、以後のローマも、もう少しどうにかなっていたような気がするのに、やっぱり謀殺されてしまう。ホントにもったいない。

 この巻を読むと、安定した治世の為には、指導者層が安定していることが必要だということがわかる(逆に、世の中が安定しているから指導者層も安定する、とも言えるのかもしれないが)。日本も、一人の総理大臣に、もう少し長めの時間をやっても良いんじゃないかなぁ。
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by fkmn | 2007-10-29 23:55 | 読書記録
【感想】フェルマーの最終定理
フェルマーの最終定理 (新潮文庫)
Amazon.co.jp: フェルマーの最終定理 (新潮文庫): 本: サイモン シン,Simon Singh,青木 薫

 まさかこの手の理系読み物で涙目になるとは思わなかった。まだ読んでいない人は、ぜひとも読んだ方がいい。

 本書で特にすごいのは、科学的興味を沸き立てる話題と感情に訴えかける話題が両立していること。数学的な話題に惹かれて読み進めていくと、いつの間にか話題は人間ドラマに移り、その人間ドラマに夢中になっているうちに、話題は数学へと移っていく。終盤のワイルズのくだりはなんとも言えない盛り上がりを見せる。いや、すごい。

 これはぜひとも、サイモン・シンの別の作品も読まなきゃいかん、ということで、今は通勤電車の中で「暗号解読」を読んでいる。
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by fkmn | 2007-10-23 23:55 | 読書記録
【感想】富の未来
富の未来 上巻 富の未来 下巻
Amazon.co.jp: 富の未来 上巻: 本: A. トフラー,H. トフラー,山岡 洋一
Amazon.co.jp: 富の未来 下巻: 本: A. トフラー,H. トフラー,山岡 洋一

 本書で述べられている「富」とは、必要や欲望を満たす全てのものの事。農業経済(第一の波)、工業経済(第二の波)の時代から、世の中は知識情報経済(第三の波)へと移行しつつある。有形資産が重要な位置を占めていた第二の波に対して、第三の波では、知識や情報といった無形資産が大きな役割を果たす。そのような経済状況の中では、資本主義は大きく変化するだろうし、また経済の中心も移動していくだろう。

 というような内容のお話。「フラット革命」と似たような切り口の内容だけど、こちらの方が、もう少し概要的で抽象的。


 経済の中心が、自動車生産に代表されるような製造業から、(グーグルやマイクロソフトに代表される)情報産業に移っているのは、世の中のニュースを見ていると実感する。それにも関わらず、日本人がいまだに「ものづくり」という言葉にこだわっているのは何なんだろうか。今までの製造業と同じような考えで、情報化している産業を考えるべきじゃないという思いを、この本を読んで強くした。はっきり言って、「ものづくり」も「Web2.0」と同じような buzzword でしかないと思う。


*読みながらメモを取ったので、後で追加する予定。
 ↓↓↓
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by fkmn | 2007-10-09 23:55 | 読書記録
【感想】ローマ人の物語 終わりの始まり
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Amazon.co.jp: ローマ人の物語 29 (29) (新潮文庫 し 12-79): 本: 塩野 七生
Amazon.co.jp: ローマ人の物語 30 (30) (新潮文庫 し 12-80): 本: 塩野 七生
Amazon.co.jp: ローマ人の物語 31 (31) (新潮文庫 し 12-81): 本: 塩野 七生

 相変わらずの塩野節。「と思う」とか、仮定から断定への無理な展開(「xxxであったはずである。そして、xxxであれば、○○○となるのも当然であった。」みたいな感じの文章)とか、巻が進むごとに酷くなってくるのは、僕の気のせいだろうか?

 内容の方も、いよいよ雰囲気が下降気味。ローマ帝国が斜陽の時期を迎えるのと同調するように、文章の雰囲気や筆者のモチベーションも下降しているように感じた。
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by fkmn | 2007-10-05 23:55 | 読書記録
【感想】カラマーゾフの兄弟(亀山郁夫 訳)
カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟3
カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟 1 (光文社古典新訳文庫)
カラマーゾフの兄弟 2 (光文社古典新訳文庫)
カラマーゾフの兄弟 3 (光文社古典新訳文庫)
カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)
カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)


小説自体の内容もさることながら、「訳」の部分にも注目してしまう。

「カラマーゾフの兄弟」の訳本はいくつもあるけれど、今であれば、この亀山郁夫訳がお勧めなのは間違いない。もうこれほどかというほどに、「カラマーゾフの兄弟」を読みやすく工夫が散りばめられている。

箇条書きにしてみると、

1. 訳の日本語が読みやすい
 「いま息をしている言葉で」というのは、光文社古典新訳文庫で標榜されている文言。本書では、これが確かに実現されている。文章が、つまづく事なく、スッっと頭の中に入ってくる。

2. 名前への配慮
 ロシア文学の一つ厄介なところは、登場人物の色々な愛称が唐突に出てくる事。予備知識なく「ミーチャ」->「ドミートリー」のような変換が出来る日本人はまずいないと思う。本書では、しおりに人物紹介が書かれていて、そこに愛称とフルネームが併記してある。これだけで分かりやすい。さらに、第一巻の読書ガイドで、ロシア文学の人物名称に関する特徴が解説されていて、これを読めば名前に関して迷う事も無くなると思う。

3. 読書ガイド
 各巻末に読書ガイドがつけられている。その巻ごとの読みどころが解説されていて、より深く「カラマーゾフ」の世界を楽しむ事が出来る。ネタバレしないような配慮もされているので、まず本文を読む前に、この読書ガイドを読むべき。

4. 部ごとに分冊されている
 亀山郁夫訳では、1部に対して1巻が割り当てられている。そのせいで、各巻のページ数が若干いびつにもなっているけれども、それにも増して、各部ごとの区切りが明確になっていて、全体の構造が把握しやすくなっている。

とにかく、とても読みやすくなっている。訳者の「カラマーゾフの兄弟」への熱狂が紙の裏からにじみ出てくるよう。
 日本のどこかで、だれかが、どの時間帯にあっても、つねに切れ目なく、お茶を飲みながら、あるいはワインを傾けながら、それこそ夢中になって 『カラマーゾフの兄弟』を話し合うような時代が訪れて欲しい、と。
【カラマーゾフの兄弟 5 p. 363】
本書によって、訳者の夢は一歩実現に近づいたのは間違いない。




 以下、蛇足っぽくなるけど、原卓也訳に続いて、2回目の「カラマーゾフの兄弟」を読んで感じたこと。

どうやら僕は、他のカラマーゾフの兄弟に熱狂する人(例えば、訳者の亀山さんや「極東ブログ」さん、等々)のようなインパクトをこの小説からは受けていないらしい。

 たぶん、それは、僕がアリョーシャの立場からでしか、この小説を読めていないからではないかと思う。もう少し歳を取って、ドミートリーやフョードルの立場が理解できるようになった時(たぶん10年か20年後)、もう一度この本を読んでみれば、また違う印象を受けるのではないか、という直感がある。
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by fkmn | 2007-09-23 15:25 | 読書記録


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